熊本大学などの研究グループは、事前学習データを使わず、軟X線ARPESの測定画像1枚から電子のバンド構造を明瞭に可視化するAI解析法を開発しました。大型放射光施設SPring-8(BL25SU)のデータで実証し、40秒測定の画像でも信号成分を抽出し、解析は約20秒で完了するとしています。
手法は深層ニューラルネットワークの「Deep Prior(深層事前分布)」を利用し、画像ごとに小規模ネットワークを最適化します。学習が進むと信号に続いてランダムノイズや格子状アーティファクト(測定系由来の格子模様)が再現されやすい性質に着目し、平均二乗誤差の変化と格子状アーティファクト強度を組み合わせて学習停止の最適タイミングを自動で決め、ノイズ抑制と信号抽出を両立しました。
軟X線ARPESは物質内部の電子状態に感度がある一方でS/Nが低く、短時間のFixedモード測定では格子状アーティファクトが課題でした。今回、標準的なSweptモード2880秒の測定に対し、40秒測定+AI解析で約70倍の高速化を示し、10秒測定でも定性的把握が可能として300倍近い短縮余地を示しました。成果は国際誌『Machine Learning: Science and Technology』に掲載され、DOIは10.1088/2632-2153/ae67cfです。
今後は測定時間短縮による試料損傷低減に加え、測定と並行したリアルタイム解析(目安として測定時間20秒以上)への展開を見込みます。スピン分解ARPESや時間分解ARPES、X線CT、X線散乱、中性子散乱など、学習データ確保が難しい計測への適用可能性を検証する方針です。
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詳細URL https://www.kumamoto-u.ac.jp/whatsnew/sizen/260612-3
