トルコ南東部シャンルウルファ県の新石器時代遺跡群「タシュ・テペレル(石の丘群)」で、発掘開始から5年の節目となる今年、新たに約30点の遺物が公開されました。年代は約1万2千年前と推定され、人像彫刻やレリーフなどから、当時としては想定以上に高度な社会構造や精神文化が存在した可能性が具体的に示されています。

ハッラーン平原に点在する12遺跡を対象とする同プロジェクトでは、サイブルチュ遺跡で“口を縫われた亡骸”を表現した人像彫刻が注目を集めました。死者の口を縫い閉じる行為を象ったとみられ、死生観や儀礼の複雑さを物語る例と位置づけられています。世界遺産ギョベクリテペでは壁に埋め込まれた奉納用人像が新たに確認され、セフェルテペでは高低差をつけた人面レリーフ2点が出土するなど、多様な造形技法が明らかになりました。

プロジェクトにはトルコ国内15機関と海外21機関、計36研究機関から219人の研究者が参加し、12遺跡で同時進行の調査を実施しています。これは、狩猟採集から定住社会へ移行した新石器時代を、遺跡単体ではなく広域ネットワークとして捉え直す試みです。文化観光省の「未来への遺産プロジェクト」の一環として、ギョベクリテペの「ライオンの構造物」や「構造物C」の修復が完了し、カラハンテペやサイブルチュでも建築的修復が続いています。

国際発信も加速しており、ローマ・コロッセオでは2024年10月から2025年3月までの展覧会に約600万人が来場。今後はベルリン、ロンドン、東京で関連展示が予定されています。プロジェクトは来年6年目を迎え、ピラミッドやストーンヘンジより古い時期に高度な社会があったとする仮説の検証が一層進む見通しです。発掘と保存、国際展示が連動することで、「人類史の出発点」をめぐる研究と議論は、今後も世界規模で拡大するとみられます。

【展覧会情報】

Göbeklitepe: The Enigma of a Sacred Place/ローマ・コロッセオ/2024年10月〜2025年3月

Built Community: Göbeklitepe, Taş Tepeler, and Life 12,000 Years Ago/ベルリン・ジェームズ=サイモン・ギャラリー/2026年2月〜7月予定

ギョベクリテペ/タシュ・テペレル展(調整中)/ロンドン・ギルドホール・アートギャラリー/2026年予定

同展(調整中)/東京国立博物館/2027年予定

source: PR TIMES

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