純文学の主要賞である第174回芥川龍之介賞の候補作に、文芸誌「文學界」掲載作から坂崎かおるさんの「へび」と久栖博季さんの「貝殻航路」の2作品が選ばれました。選考会は2026年1月14日(水)に東京都内で実施され、両作の受賞可否が決まります。
「へび」は、発達障害のある息子・夏秋と、「人形」のようになってしまった妻・那津と暮らす「あなた」の日常を、「僕」の視点から描いた作品です。少年野球を通じた夏秋の成長や、家族の逃避行に揺れる心情を通じて、親子の時間の重さを描きます。坂崎さんは1984年東京都生まれで、芥川賞候補は第171回に続き2度目です。
「貝殻航路」は、北方領土を望む土地で育ち、結婚を機に釧路へ移った「わたし」が主人公です。アラスカからの豪華客船寄港の知らせをきっかけに、アイヌの血を引く夫の不在や、ロシア船に拿捕された父の記憶がよみがえります。戦後史と民族の記憶を、霧に包まれた北の港町を舞台にたどる構成です。著者の久栖さんは1987年北海道生まれで、芥川賞候補は今回が初となります。
芥川賞は新人・中堅作家の純文学短編・中編を対象とし、受賞作は文庫化や映像化につながることも多く、文学界と出版市場への影響が注目されます。今回の結果次第で、地域や家族、歴史を描く作品への関心が一段と高まる可能性があります。
【雑誌情報】
文學界2025年10月号掲載「へび」
文學界2025年12月号掲載「貝殻航路」
source: PR TIMES
