福井県坂井市三国湊エリアで、空き家の町家を改修した古民家ホテルがここ10年で13棟に増えています。北前船で栄えた旧市街の町家をリノベーションし、1棟貸しのオーベルジュ(宿泊機能付きレストラン)やゲストハウスなど多様な宿泊施設として活用しているのが特徴です。
中心部の「きたまえ通り」沿いでは、登録有形文化財の町家を活用したフレンチ店「三国湊オーベルジュ S’Amuser」が、裏手の土蔵を約5,000万円かけて改修し宿泊棟を新設しました。坂井市と福井県の「ふくい地方創生推進事業」補助金を活用し、1棟貸し宿として7月から本格営業。9月の稼働率は約20~30%ながら、夏休み期間は70%、越前がにシーズンの11月は40%程度まで上昇し、県外客が中心に利用しています。
一方、飯田グループHD傘下のファーストウッドが手掛けた「恐竜古民家ホテル だいな荘」は、坂井市の「空家リノベーション起業者育成事業補助金」300万円を活用。福井の観光の目玉である恐竜を内装モチーフにしつつ、古材の梁など和の趣を残し、運営は芦原温泉の旅館「グランディア芳泉」が担います。客層はネット予約に慣れた県外客が中心で、2万円以下の価格帯でまち歩きと周辺観光を楽しむ若年層の需要を狙っています。
三国湊での古民家再生の嚆矢は、2015年開業のゲストハウス「詰所 三國」です。約2,600戸のうち7%に当たる約190戸が空き家という調査結果を受け、一般社団法人三國會所と坂井市などが「三国湊町家活用プロジェクト」を開始。東洋文化研究家アレックス・カー氏監修の下、旧薬局を全面改修し、古い看板や調度品を生かしながら水回りなどを現代水準に整えたことで、固定ファンを持つ宿へと成長しました。
今後は、東尋坊や芦原温泉からの周遊需要だけでなく、「三国湊そのものを目的地とする滞在型観光」に発展できるかが課題です。補助金に頼らず採算を取れるモデルを確立しつつ、北前船の歴史や祭り、食文化といった地域資源をどこまで宿泊体験に組み込めるかが、古民家ホテル増加の持続性を左右するとみられます。
【宿泊情報】
三国湊オーベルジュ S’Amuser
福井県坂井市三国町北本町4丁目5-31
恐竜古民家ホテル だいな荘
福井県坂井市三国町山王2丁目9-38
詰所 三國(ゲストハウス)
福井県坂井市三国町南本町3丁目3-17
source: PR TIMES
