福井県坂井市三国町の旧市街「三国湊」エリア(約85ヘクタール)で、この10年で古民家を改修した宿泊施設が13棟(5事業者)に増えた。2015年開業の「詰所三國」を皮切りに、ゲストハウスやオーベルジュ(宿泊機能付きレストラン)が相次ぎ誕生し、人口減少と空き家増加に悩む港町で観光を軸にしたまち再生の動きが加速している。
2021年には、江戸期築とされる町家を改修したゲストハウス「湊と暮らす宿 んだこ」が三国町南本町4丁目にオープン。市や県の補助金計1千万円を活用し、北前船交易の名残である笏谷石(しゃくだにいし)の通り土間をガラス越しに見せるなど「暮らすように泊まる」空間を演出した。口コミで岐阜県高山市からの利用客が続くなど、リピーター獲得にもつながっている。
2024年には、NTT西日本が地元金融機関などと設立した観光まちづくり会社「アクティベースふくい」が、総事業費約12億円(県補助含む)で10棟の町家を一体的に再生。「オーベルジュほまち 三國湊」として、レストラン1棟と宿泊棟9棟・計16室を開業した。チェックイン拠点から徒歩5~10分の範囲に客室を点在させ、まち全体を1つのホテルと見立てる仕組みで、滞在客の街歩き消費を促す。フレンチの名シェフ吉野建氏が監修する「タテルヨシノ 三國湊」も併設し、インバウンド(訪日客)需要も見込む。
背景には、江戸時代から続く「かぐら建て」と呼ばれる町家の街並みや、三国祭、帯のまち流しといった祭事が生む独特の景観、さらに地元住民のまちへの愛着があると、まちづくり関係者は分析する。坂井市は2024年度からNTT西日本や事業構想大学院大学と連携し、「三国湊共創プロジェクト」を始動。新業態店舗の創出やアーティスト誘致などを検討しており、古民家ホテルを起点にした新たな交流人口の拡大が、今後どこまで地域経済の底上げに結びつくかが注目される。
【施設情報】
湊と暮らす宿 んだこ
福井県坂井市三国町南本町4-10-26
電話 090-9441-5055
オーベルジュほまち 三國湊(フロント)
福井県坂井市三国町南本町3-4-39
レストラン1棟・宿泊棟9棟
電話 0776-82-0070
source: PR TIMES
