岡山大学の研究グループは、鳥類の体色を左右するASIP(アグーチシグナルタンパク質)が、食欲・代謝に関わるAGRP(アグーチ関連タンパク質)より細胞外へ分泌されにくいことを、ニワトリを用いた比較解析で示しました。分泌されにくさはASIPのN末端ドメイン構造に起因し、プロテアソームを介した分解が促されることで分泌が制限されるといいます。

ASIPとAGRPはいずれもメラノコルチン受容体を介して働く「兄弟分子」で、遺伝子重複によって共通祖先から分かれたパラログです。ASIPは主にメラニン量の調整を通じて羽色などの体色制御に関与し、AGRPは摂食や代謝の調節に関与します。一方で、両者の分泌特性の違いは十分に分かっていませんでした。

今回の研究は、ASIPが細胞内で分解されやすい構造を持つことで、結果として体色制御と摂食調節が別々のタンパク質で担われる「機能分担」が成立した可能性を示しました。今後、分泌や分解を左右する構造進化の検証が進めば、鳥類の精緻な色模様形成や環境適応の理解につながるとみられます。

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