京都大学大学院情報学研究科の物理統計学分野は、2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震(M9.1)について、高頻度GNSS(5分間隔)の地殻変動データから前兆滑り(プレスリップ)由来の異常を地震発生の約1時間前〜直前に検出し、震央を約50kmの精度で推定したとした。解析では、異常が約80分前から増大したという。

手法は、電離圏異常の推定などに使われてきた相関解析(CRA)を地殻変動データに適用するものです。日本列島と周辺海域を20km×20kmの格子に分け、各格子で地殻変動の相関値を計算し、相関が最大となる地点を震央候補として推定するアルゴリズムを用いた。データはネバダ大学が公開するGNSSデータを使用し、事前データのみで震央推定が可能だと説明している。

一方で、震央が内陸から遠い海域のプレート境界型地震では、観測点密度や距離減衰(影響が距離の二乗に反比例するR^(-2))のため推定難度が上がり、M8〜M9級でないと難しい可能性も挙げた。成果は2025年12月16日に米ニューオーリンズで開かれたAGU25で口頭発表され、12月20日に東京の日本地震予知学会でも招待講演として紹介された。今後は他地震で成り立つ条件の整理と、短期予知に必要となるマグニチュード推定の研究を進めるとしている。

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