岡山大学などの国際共同研究グループは、大型放射光施設SPring-8のビームラインBL19LXUの高輝度X線を使い、結晶中に埋め込んだトリウム229原子核アイソマーの脱励起を能動的に加速する「クエンチ」現象の温度依存性を測定しました。クエンチの変化が結晶発光の温度依存性と相関することを示し、機構モデルを構築したとしています。

研究は岡山大学(岡山市北区)に加え、高輝度光科学研究センター(JASRI)、京都大学、理化学研究所、大阪大学、産業技術総合研究所(AIST)、ウィーン工科大学(TU Wien)が実施しました。トリウム229はレーザー光で直接励起できる準安定状態(アイソマー)を持つ一方、固体中でのクエンチ機構は未解明でした。

解析では、励起電子が結晶中を拡散し、トリウム原子核と相互作用してエネルギーを受け渡すことで脱励起が加速されると説明しています。温度条件として、室温側の36℃と低温側の-120℃のデータに言及し、生成アイソマー数の増加の違いも踏まえて議論しました。論文は2026年1月8日に米物理学誌Physical Review Lettersに掲載され、DOIは10.1103/75bb-thn7です。

今回の知見は、固体型原子核時計の動作に必要な「核状態の初期化(リセット)」に相当するクエンチ過程の理解を進め、高精度な原子核時計の実現に向けた基盤になると位置付けられます。今後は、モデルに基づく材料設計や温度制御の最適化が進めば、小型・可搬な時間標準として衛星測位や地球重力場観測、基礎物理検証などへの応用が広がる可能性があります。

【関連リンク】
詳しい研究内容(PDF):https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r7/press20260109-1.pdf
論文URL:https://journals.aps.org/prl/accepted/10.1103/75bb-thn7
岡山大学リリース:https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id1484.html

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