芸能・舞台・映像分野で働くフリーランスの実演家やスタッフが、2025年12月15日から労災保険に「個人」で加入しやすくなります。一般財団法人日本実演芸術福祉財団の労災保険センターが、所属団体の有無を問わず個人事業者を対象に特別加入の受付を開始し、会費を原資にした仕組みにより手数料を業界最安クラスまで抑え、加入者の自己負担を大幅に軽減します。

エンターテインメント業界では、2020年以降のコロナ禍で全国の公演・イベントが中止となり、仕事を失ったにもかかわらず、労災保険や失業手当の対象外となるフリーランスが多数存在する問題が顕在化しました。2023年の文化芸術推進フォーラム等の調査(n=20,273)でも、社会保障が十分に行き届いていない実態が示されています。こうした中、2021年4月に「芸能関係作業従事者」が労災保険の特別加入対象となりましたが、認知不足や保険料・手数料負担の重さから加入は伸び悩んでいました。

課題解決に向けて、日本芸能実演家団体協議会(芸団協)など4団体が発起人となり、創設賛同10団体とともに2025年7月に日本実演芸術福祉財団を設立。事業者団体や劇団、バレエ団、職能団体などからの会費を労災保険センター運営費に充当することで、個人加入者の費用負担を下げる「互助プラットフォーム」を構築しました。労災保険は本来、雇用労働者を対象とする国の制度ですが、特別加入を通じてフリーランスのケガや病気、死亡時の補償も可能になります。

今後は、センターを通じた周知と相談対応を進めることで、これまで金銭面や情報不足から加入をためらっていた実演家・スタッフの保護拡大が期待されます。一方で、制度の持続性や給付内容への理解促進など、実務運用面での検証も求められ、エンタメ業界におけるセーフティネットづくりのモデルケースとなるかが注目されます。

【イベント情報】

芸術家のための社会保障シンポジウム―今、文化芸術の担い手が求めるセーフティネットとは

日比谷三井カンファレンス

2025年12月12日(金)開催

【制度関連情報】

一般財団法人日本実演芸術福祉財団

労災保険センター(労災保険特別加入・芸能関係作業従事者)

source: PR TIMES

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