国境なき医師団(MSF)は2026年1月26日、武力紛争下で医療施設や医療従事者が攻撃される事例が記録的水準に達しているとして、報告書「標的にされる医療」を公表しました。WHOの監視システムでは2025年の医療施設への攻撃が1348件、殺害された医療従事者と患者は1981人で、2024年の944人から倍増しています。

影響が最も深刻だったのはスーダンで殺害数は1620人に上り、ミャンマー148人、パレスチナ125人、シリア41人、ウクライナ19人が続きました。MSFは、交戦勢力が「誤爆」ではなく「保護の喪失」を理由に攻撃を正当化する説明へ転じる傾向が強まり、民間人保護と医療の保護が損なわれていると指摘します。

背景として、Safeguarding Health in Conflict Coalitionの最新データでは、医療を標的とした事件は2024年に3623件で、2023年より15%、2022年より62%多く、うち約81%が国家組織による暴力とされています。また援助活動に従事する現地スタッフの被害は2021~2025年に殺害1241人、負傷1006人、誘拐604人で、殺害の98%を現地スタッフが占めました。

MSFは、各国政府や紛争当事者に対し、国際人道法に基づく医療の保護を軍の指針や意思決定に組み込み、独立した事実調査の受け入れや透明性の高い結果共有を進めるよう求めています。国連安保理決議2286号の採択から10年が経過しても改善が乏しいとして、説明責任の履行が今後の焦点になるとしています。

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