UMAMI Bioworks(東京・港区)は、水産分野で初となるAI駆動の計算エンジン「バーチャル・マリンセル」を公開しました。マグロやサケ、ブリ、ウナギなど主要魚種の細胞が成長や栄養、ストレスにどう反応するかをコンピューター上で再現し、従来は数年かかった養殖や培養シーフードの研究開発期間を、計算中心のプロセスで大幅に短縮するとしています。
バーチャル・マリンセルは、人工知能と機械学習を用いた「代謝モデル」と呼ばれる仕組みで、細胞がエネルギーや栄養素をどう使い、どのような有用物質を作り出すかを数値的に予測します。日本の養殖業が抱える、水温上昇や疾病リスク、飼料価格の高騰、稚魚不足といった課題は、細胞レベルの理解不足が一因とされてきました。同モデルを使うことで、生存率や成長速度、脂質組成、免疫応答などを事前にシミュレーションし、実験回数とコストを抑えながら生産性向上を図れるといいます。
また、日本が世界をリードするマリン由来機能性素材の分野では、脂質やペプチドなど高付加価値成分の探索に長い時間と費用がかかっていました。新モデルでは、こうした成分がどの代謝経路から生まれ、どの程度分泌されるかを短期間で解析でき、遺伝子改変に頼らず培養条件の最適化だけで生産性を高められる可能性があります。
同社は国内の水産・養殖・バイオテクノロジー企業などと連携し、モデルの精度向上と実証を進めています。今後数カ月以内には東京にAIイノベーションセンターを設置し、日本のブルーエコノミーの競争力強化に向けた共同研究を拡大する計画です。気候変動や漁獲量減少で不安定化する水産供給に対し、細胞レベルから予測し備えるインフラとして普及するかどうかが、今後の焦点となります。
source: PR TIMES
