多年生植物オオバコの種子が、ダンゴムシの糞に含まれる成分を感知して発芽を一時的に止め、食害を避けていることが分かりました。京都大学や熊本大学など7機関の研究チームが実験と野外調査で確認し、英科学誌「New Phytologist」オンライン版に2025年12月9日に掲載されます。
研究では、オオバコ種子がダンゴムシ(Armadillidium vulgare、Porcellio scaber)の糞に接すると、糞中の糖の一種「トレハロース」と植物ホルモン「アブシジン酸(ABA)」の働きで発芽が一時的に抑えられることを突き止めました。これらの物質は雨で洗い流されると消失し、その後発芽が再開されました。野外ではダンゴムシの糞がある場所で、雨天時に発芽が集中し、ダンゴムシによる食害頻度が低いことも確認されています。
従来、種子は光や温度など環境条件に応じて発芽時期を調整すると考えられてきました。今回の結果は、種子が植食者(植物を食べる動物)の糞という「危険のシグナル」にも応答し、動物の活動が弱まる時期まで発芽を遅らせる戦略をとる可能性を示しています。
ダンゴムシ2種は外来種であり、この応答が在来ダンゴムシとの関係から進化した仕組みなのか、あるいは普遍的な防御戦略なのかは未解明です。研究チームは今後、在来種・外来種ダンゴムシ間での違いや、他の植物種での同様の現象を調べることで、種子と動物の新しい共進化関係の解明が進むと見込んでいます。
source: PR TIMES
