三菱重工業は、世界大手セメントメーカーのハイデルベルク・マテリアルズ社から、英国ウェールズ州ペイズウッドセメント工場向けのCO2回収プラントを豪ウォーリー社と共同で受注しました。英国のセメント生産でCCS(CO2回収・貯留)設備が導入されるのは初めてで、2029年に運転を開始し、年間約80万トンのCO2を回収する計画です。

この設備には、三菱重工独自のCO2回収技術「Advanced KM CDR Process」が欧州で初採用されます。アミン系溶剤「KS-21」を用いてエネルギー消費を抑えつつCO2を分離回収する技術で、同社はこれまで同系統の技術を使ったプラントを18基納入、2基建設中としています。回収したCO2はパイプラインで輸送され、英国政府が進めるCCUS(CO2回収・利用・貯留)クラスター「HyNet CCUS」の一環として、リバプール沖の枯渇ガス田に恒久的に貯留されます。

ペイズウッド計画は、英国政府のCCUSクラスター・プログラム「トラック1」に位置付けられ、2025年9月にはハイデルベルク・マテリアルズ社と政府が共同で最終投資決定(FID)を完了済みです。世界のCO2排出量の7~8%を占めるとされるセメント生産は、石灰石を焼成する工程から大量のCO2が出るため、再生可能エネルギーへの転換だけでは削減が難しく、CCSが有力な対策とみなされています。

プロジェクトは、既存の約200人の雇用維持に加え、新たに約50人の正規雇用を創出し、建設段階で最大500人の雇用を生む見込みです。今後は、詳細設計と機器調達、現地建設が本格化します。英政府は産業部門の脱炭素化と同時に地域雇用の下支えも狙っており、今回の案件が欧州でのセメント産業向けCCS拡大の試金石となるかが注目されます。

【製品情報】

三菱重工グループ「CO2回収技術」製品情報

https://www.mhi.com/jp/products/engineering/co2plants.html

source: PR TIMES

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