直木賞作家・伊与原新さんの最新作『翠雨の人』が、電子書店Apple Booksの「2025年のベストブックス」5作品の一つに選ばれました。年間ベストに選出されたのは、2025年7月30日に発売されたハードカバー作品で、税込価格は1,980円、ISBNは978-4103362159です。
『翠雨の人』は、1920年東京生まれの女性地球科学者・猿橋勝子の生涯を描く長編小説です。紫陽花と雨を愛する少女が、「雨とは何か」という素朴な疑問から科学の道へ進み、日本初の女子理系専門学校・帝国女子理学専門学校(現・東邦大学理学部)第1回生として学ぶ姿を追います。作品内では、戦中の中央気象台勤務や、ビキニ水爆実験で降った「死の灰」の分析など、実在の研究活動と当時の社会状況が具体的に描かれます。
猿橋は、1954年の放射能汚染調査で核実験抑止に影響を与えたとされ、1980年には女性研究者を顕彰する「猿橋賞」を創設しました。物語は、戦争と科学の関係に葛藤しながらも、「人類を幸せにする」という科学の目的を模索し続けた女性の姿を、戦後80年という節目に重ねて描いています。
著者の伊与原さんは1972年生まれの理学博士で、2025年に『藍を継ぐ海』で第172回直木三十五賞を受賞したばかりです。科学的知見と物語性を併せ持つ作風が支持を広げるなか、国際的なプラットフォームであるApple Booksの年間ベスト選出は、科学と文学の融合作品への関心がさらに高まる契機となりそうです。
【書籍情報】
タイトル 翠雨の人
著者 伊与原新
発売日 2025年7月30日
定価 1,980円(税込)
公式サイト https://www.shinchosha.co.jp/book/336215/
source: PR TIMES
