株式会社Quemix(テラスカイグループ)と三菱電機、東京科学大学、筑波大学の4者は2026年1月14日、シリコンに注入した水素が特定の欠陥と結合して自由電子を生み出す仕組みを理論的に解明したと発表しました。水素注入による電子濃度制御はIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)で実用化されてきましたが、現象発見から約半世紀、自由電子が増える理由は未解明でした。
IGBTは電力変換の中核デバイスで、カーボンニュートラルに向けた高効率化の要として損失低減が課題です。三菱電機と筑波大学は2023年、電子濃度増加に寄与する複合欠陥を見つけ、格子間シリコン対(結晶の乱れ)と水素の結合で形成されることを示していました。今回4者はその複合欠陥に着目し、第一原理計算(量子力学に基づく計算)などで欠陥中の水素の状態を特定し、水素が電子を放出する理由と、その電子がシリコン中で自由電子として振る舞う道筋を説明しました。成果はNature系誌Communications Materialsに2026年1月13日(ロンドン時間)にオンライン公開されています。
今後は、この理解を基にIGBTの電子濃度制御をより高精度にし、構造設計や製造プロセスの最適化を通じた電力損失低減に結び付くかが焦点です。理論の拡張により、制御が難しいとされるダイヤモンドなどUWBG材料(超ワイドバンドギャップ半導体)デバイスへの応用可能性も示され、次世代パワー半導体への展開が期待されます。
