静岡大学大学院総合科学技術研究科の研究グループは、シアノバクテリアSynechocystis sp. PCC 6803から、β-カロテンがほぼ完全にカンタキサンチンへ置換された光化学系I(PSI)三量体を精製・解析し、主要カロテノイドが入れ替わってもPSIが構造と基本的な光化学機能を維持することを示しました。研究は深澤貴徳さん(修士1年)と長尾遼准教授らが担当し、成果は国際学術誌「Photosynthesis Research」に2026年2月24日付で掲載されています。

PSIは酸素発生型光合成で光エネルギーを化学エネルギーに変換する膜タンパク質複合体で、通常はβ-カロテンなどのカロテノイドが結合し、光利用効率や光保護に関与するとされます。β-カロテンは内部に深く結合するため「PSIはβ-カロテンを前提に成り立つ」という見方があり、色素組成の変化をどこまで許容するかが検証課題でした。

研究チームはβ-カロテンをカンタキサンチンへ変換するcrtW遺伝子を導入(過剰発現)した株を作製し、PSI三量体を精製しました。色素組成解析でβ-カロテンが非検出である一方、カンタキサンチンが主要結合色素であることを確認し、SDS-PAGEとBN-PAGEでサブユニット構成と三量体構造を評価しました。さらに吸収スペクトルでは450~570 nmの領域でカロテノイド由来の変化を観測しつつ、約−196℃での低温蛍光スペクトル測定により、光エネルギー移動に関わる分光学的特性が維持されることを検証しました。

今後は、PSIが受け入れ可能な色素の種類や配置条件の整理が進むことで、光合成装置の「色素選択性」の理解が更新される可能性があります。色素設計にもとづく光保護・吸収特性の調整や、人工的光合成システム開発に向けた基礎データとしての活用が期待されます。

【関連リンク】
論文DOI: https://doi.org/10.1007/s11120-026-01200-w
詳細URL: https://www.shizuoka.ac.jp/news/detail.html?CN=11679

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