多年生植物オオバコの種子が、植食者であるダンゴムシの糞中成分を感知して発芽を一時停止し、食害を避けていることが分かりました。京都大学、熊本大学など8機関の研究チームが、糞に含まれる糖の一種トレハロースと植物ホルモンのアブシジン酸(ABA)が発芽を抑えること、雨でこれらが洗い流されると発芽が再開することを実験で示しました。野外調査では、ダンゴムシの糞がある場所での発芽が雨天時に集中し、食害頻度が低いことも確認しています。

研究では、オオバコ種子をダンゴムシの糞やトレハロース、ABAとともに培養し、発芽率を比較しました。その結果、糞や両成分が存在すると一定期間発芽率が有意に低下し、水洗い後に発芽が急増することが、統計的に明瞭な差として示されました。ダンゴムシは乾いた晴天時に活動が活発になる一方、雨天時には活動が低下するため、糞中成分による「待機」と降雨後の「一斉発芽」が、食べられるリスクを減らしながら実生定着を高めていると考えられます。

従来、種子は光や温度、湿度などの環境条件を手がかりに発芽のタイミングを調整するとされてきました。今回、動物の排泄物に含まれる化学物質という「植食者由来の情報」を利用する仕組みが示されたことで、植物と動物の関係性に新たな側面が加わりました。ただし、対象としたダンゴムシ2種はいずれも外来種であり、この応答が在来のダンゴムシとの長期的な共進化の副産物なのか、あるいはより一般的な化学応答なのかは不明です。研究チームは、在来種ダンゴムシとの比較や、他の植物種で同様の現象が起こるかどうかを検証し、自然選択の過程や生態系全体への影響を今後明らかにしていくとしています。

【研究情報】

論文名:Isopod-feces-mediated shifts in germination timing enhance seedling establishment

掲載誌:New Phytologist(2025年12月9日オンライン掲載)

DOI:10.1111/nph.70750

source: PR TIMES

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