岡山大学と名古屋工業大学、名古屋大学、金沢大学、慶應義塾大学、福岡工業大学の共同研究グループは、二次元半導体「遷移金属ダイカルコゲナイド(TMDC)」をナノスケールのデンドライト(樹枝状)ネットワークに合成する手法を示し、代表例としてWS₂(タングステン・ジスルフィド)で水素発生反応(HER)触媒として機能することを確認しました。成果は2025年12月4日に学術誌Small Structuresに掲載されています(DOI:10.1002/sstr.202500542)。
TMDCは原子数層の薄さを持つ二次元材料で、電気・光学特性からデバイスや電気化学で注目されています。一方、触媒では反応点になりやすい「エッジ(端)」を増やす構造設計が課題でした。今回の手法は、単層TMDCと成長基板の界面に生じるナノスケールの閉じ込め空間を反応場(ナノリアクタ)として利用し、ナノリボンが枝分かれして連結するデンドライト構造を形成させた点が特徴です。構造は高分解能STEM観察などで示されています。
今後、貴金属を使わないHER触媒の高度化に加え、ナノスケール光電子デバイス向けの材料設計へ展開できるかが焦点です。対象材料や基板条件の拡張、性能指標の定量比較が進めば、エネルギー変換材料としての活用範囲が広がる可能性があります。
