北海道の前期鮮新世(約500万年前)の地層から、北海道初となる介形虫(かいけいちゅう)化石群が10属12種見つかり、このうちトラキレベリス科の新属・新種「Woodeltia sorapuchiensis(ウッデルティア ソラプチエンシス)」が提唱されました。日本から北米まで約6500kmの移動経路を示す証拠として注目されています。

研究チームは、北海道中央部に広がる浅海性の地層「深川層群滝川層」から得られた介形虫化石を詳細に解析し、群集の多様性と現生種の生息環境を比較しました。その結果、当時の北海道沿岸が、現在の本州太平洋側に近い比較的温暖な浅海環境だったと推定しました。介形虫は米粒ほどの小さな甲殻類で、殻がよく化石として残るため、海の環境変化を復元する指標生物として使われます。

今回命名された新属Woodeltiaは、本州の温暖な海で進化した系統が、冷涼な北海道を経由して北米沿岸へ拡大していく途中段階を示すと解釈されています。これまで日本と北米の介形虫化石の関係はほとんど検討されておらず、北太平洋規模での生物分散と海流の歴史を読み解く手がかりになると期待されています。本成果は査読科学誌「Journal of Paleontology」に2025年11月26日付で掲載されました。

一方で、北海道の新第三紀以降の介形虫記録は依然として乏しく、中期中新世(約1500〜1300万年前)に報告された2種に続き、さらなる採集と記載が課題とされています。今後、北海道各地の地層で調査が進めば、新たな未記載種の発見や、介形虫の進化史・北太平洋の古環境像に、より精密な像が描かれると見込まれます。

source: PR TIMES

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