熊本大学の研究グループは、水溶液を蒸発させるだけで右手型・左手型のバルク結晶が得られ、しかも円偏光発光(CPL)を示す無機結晶を確認したと発表しました。対象はキラルなカリウム‐ユウロピウム硝酸塩で、成果は米化学誌「Journal of the American Chemical Society」に掲載されました。
CPLは、光が進行方向に対して右巻き・左巻きのらせん状に振動しながら放射される発光で、材料の「キラリティー(鏡像の右手と左手のように重ならない性質)」と関わります。今回の結晶は、結晶化の過程で右手型と左手型が分かれて生成する自然分晶により作り分けられ、偏光顕微鏡で色の変化として両者を識別できる点も特徴です。
一般にCPL材料は有機系で研究例が多い一方、完全無機のバルク結晶での材料探索は限られてきました。研究では、無機結晶でもイオン配列や対称性の制御によってCPLを誘起できる可能性を示した形です。支援にはJSTの創発的研究支援事業(課題番号JPMJFR223D)が含まれます。
今後は、無機結晶でCPL材料を実現するための設計指針の整理や、対称性制御による新しい発光材料の探索が進むとみられます。
