TOPPANホールディングス、大阪大学大学院工学研究科、がん研究会、札幌医科大学の4者は、難治性がんが持つ物理的な防御壁「バリア」を体外で再現した3Dモデルを構築し、約90種類の薬剤候補からバリアを弱める「HDAC阻害剤」を特定した研究成果を、国際科学誌「Acta Biomaterialia」(2025年10月15日付)に掲載しました。

研究チームは、TOPPANが独自開発した3D細胞培養技術「invivoid®」を用い、ヒトの腫瘍微小環境(TME)を模した三次元組織を作製しました。間質細胞の層の内部にがん細胞の塊を配置し、T細胞ががん細胞を認識して集まり殺傷する様子を定量的に観察できる点が特徴です。さらに線維芽細胞を活性化してCAFを豊富に含む組織を作ることで、T細胞の侵入と殺傷能力が著しく抑えられる、難治性固形がん特有の「免疫細胞排除」現象の再現に成功しました。

このモデルを用いて創薬スクリーニングを行った結果、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤が、CAFによるバリア形成機能を弱め、T細胞の腫瘍内部への侵入とがん細胞の殺傷を大きく高める相乗効果を示すことが分かりました。従来、ヒトの複雑なTMEと免疫応答をマウスで安定再現することには種差の問題がありましたが、本成果はヒト細胞ベースで免疫療法の効き目を検証できる新たな評価系として注目されます。

今後4者は、本3Dモデルを基盤に、がん免疫療法を補強する新規薬剤の探索や、細胞間相互作用メカニズムの解明を進める方針です。創薬研究や創薬支援事業において、難治性がん向け治療法の開発スピード向上への貢献が期待されます。

【技術・論文情報】

invivoid紹介サイト https://www.holdings.toppan.com/ja/invivoid/index.html

論文掲載ページ https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1742706125006774?via%3Dihub

source: PR TIMES

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