Helioverse Innovations Japan(東京都港区)が、NEDOの2025年度「NEP躍進コース」に採択され、皮膚を貫通する電源ケーブル(ドライブライン)を不要にする「完全ワイヤレス人工心臓」の開発を進めます。2025年度は166件応募のうち31件が採択され、同社は2030年の臨床治験開始を目標に掲げています。開発するのは「電源ケーブルレス低侵襲補助人工心臓」と「生体内ワイヤレス電源」で、体外から体内へケーブルなしで電力を送る高効率のワイヤレス給電技術と、超小型の磁気浮上式血液ポンプを統合します。将来的にはカテーテルによる低侵襲手術での植込みも視野に入れ、感染リスクと生活制約の軽減を狙います。背景には、既存の植込み型補助人工心臓(LVAD)がドライブラインを必要とし、デバイス感染が約22%発生するという課題があると同社は説明します。日本の心不全患者は約120万人超で、2030年には約130万人に増える予測も示されており、治療の選択肢拡充が急がれています。共同開発では国立循環器病研究センターが生体環境下での機能性・安全性評価や臨床に向けた根拠づくりを担い、早稲田大学は拍動循環シミュレータなどで血流解析を行い血栓や血球損傷リスクの抽出、流路設計を支援します。ワイヤレス電源はペースメーカーの約1,000倍の電力を要する機器にも応用し得るとして、人工腎臓や人工肺、神経刺激装置などへの展開可能性も論点になります。今後は実装・評価を重ね、感染低減と安全性の両立をどこまで実証できるかが、2030年の治験入りに向けた焦点となりそうです。

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