順天堂大学などの共同研究グループは、ATMキナーゼ阻害剤「KU60019」をヒトiPS細胞由来神経細胞に処理して細胞老化様状態を誘導し、アルツハイマー病やパーキンソン病など加齢関連神経変性疾患モデルの病態再現に要する時間を短縮する手法を開発しました。研究成果は2026年6月11日、Stem Cell Reports誌オンライン版で公開されました(DOI: 10.1016/j.stemcr.2026.102956)。
iPS細胞は作製過程で老化情報がリセットされるため、加齢が関与する病態の再現が難しい点が課題でした。今回、化合物スクリーニングでKU60019を同定し、iPS由来ドパミン神経細胞などに適用したところ、老化指標としてSA-βGal陽性の増加、DNA損傷応答の変化、核膜構造異常、オートファジー異常、NAD/NADH比の低下が確認されました。
さらに、アルツハイマー病のPSEN1変異iPS細胞モデルではAβ42やリン酸化タウの増加、細胞生存率低下をより早期に観察し、パーキンソン病モデルでも疾患関連表現型の早期検出を確認しました。若年者由来皮膚線維芽細胞でも老化様変化を誘導できたとしています。
遺伝子操作を用いず化合物処理で老化様状態を導入できることから、病態解析や創薬研究の効率化が見込まれます。今後はグリア細胞など他の細胞種への展開により、加齢と細胞老化を軸にした疾患研究への応用が広がる可能性があります。
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ヒトiPS細胞由来神経細胞に老化を誘導する新技術を開発
